虫は[第四十三段]
―口語訳―
虫は、そうねぇ鈴虫(今で言うと松虫ね)でしょう?それからヒグラシ・蝶々・松虫(今の鈴虫なの)にキリギリス(今のコオロギ)・はたおり(今のキリギリス)
ワレカラにひお虫(かげろうのこと)に蛍ね、これがかわいいのよね〜。
みの虫はね、じっつに憐れな気分にさせる虫なのよね。(知ってた??)
鬼が生んだ子供って言われてるもんだから、このみの虫も親である鬼に似て恐ろしい性格を持っているんだ!と思ってたの。でも、違ったの。
親(鬼)がメチャクチャ粗末な着物(洋服ね)を着せてさ、
「もうすぐ秋風が吹くようになるから、その時には迎えに来てあげるからね。それまで待ってなさいね」
と言ってね、親である鬼は置き去りにして逃げちゃってたのよ!!
でも、そんなことは全然知らない子供であるみの虫は、秋風の音を敏感に聞き分けて、8月頃(今でいうと9月頃かしら?)になると
「お父さ〜ん、お父さ〜ん・・・」って心細そうに泣くのよ、とってもかわいそうでないわ。
次は、ぬかづき虫の話よ。
この虫がまた、小さいのに、体と心に仏様への信心をおこしてさ土下座しまくってるのよ。(と私はぬかづき虫の行動を見て推理しているのよ)
思いもよらない、暗〜い場所で、コトコトって音を立ててまわっているのは、ちょっと可愛いげがあって面白いわよね。
今度は蝿よ、ハエ!
このハエってのは”憎らしいもの”に分類すべきよね、全くもって可愛げのない生き物なのよね!皆もそう思うでしょう?
人間並みに扱って相手にする生き物じゃないんだけどね。秋なんかは、そこらへんにあるあらゆる物に止まって、そのうえ顔なんかに濡れてるみたいに
冷たい足で止まったりするのよ!(すっごく気持ちが悪いったらないわよ!)
人の名前についてるのなんか(名前にハエって字があるってことね)本当にイヤ!!
夏虫は、かなり面白くって可愛らしい感じがする虫なのよね。
明かりを近くに引き寄せて物語なんかを読んでる時にね、とじ本の上なんかを飛びまわるのはとっても面白いわよね。
アリは、ひどく憎らしいけど、あの身軽さはたいしたものよね。だって、水の上なんかをどんどん歩きまわってるんだもの。おっもろしろいわよね〜。
少し解説
”ぬかづき虫”について
ぬかづき虫というのは、今でいう米つき虫のことを言います。頭を上下させるので、額の古称である「ぬか」を地につけて、お辞儀をしていることに見立ててこの名前を付けたようです。
文中に、人の名前にハエという字がはいっているのはキライだというところがあります。このことについても少し。
「古事記」安寧(あんねい)天皇の条に「蝿伊呂泥(はえのいろね)。蝿伊呂杼(はえのいろど)」の人名があるようです。虫の名を名前に使っている例は「堤中納言物語」にもありますが、
平安時代には貴族階級の人では例がないので、多分庶民階級の人の名前を思い浮かべているのではないかな?(と参考文献にあります)